実家の空き家が売れなくなる前に。家族信託・任意後見・生前贈与の違いを比較

「実家を売って親の介護費用に充てたいが、最近もの忘れが増えてきた」
「もし親の判断能力が落ちたら、実家の売却や名義の整理はどうなるのだろう」
近年、増えているのが「実家の凍結」です。名義人である親の判断能力が低下すると、不動産の売却、解体、大きな契約行為は一気に進めにくくなります。
こうなると、空き家になった実家を整理したくても、固定資産税や管理負担だけが残り、家族が動けないまま時間だけが過ぎることがあります。
そこで問題になるのが、親が元気なうちに何を準備しておくべきかです。
この記事では、実家の空き家問題や不動産凍結対策としてよく検討される「家族信託」「任意後見」「生前贈与」について、不動産の管理・処分のしやすさを中心に整理します。
1.なぜ親の判断能力が落ちると、実家は「動かしにくく」なるのか?
不動産の売却や大きな契約には、本人の意思能力が必要です。判断能力が不十分になると、実家の売却や解体、活用の契約が進めにくくなります。
- 売却が進めにくくなる:本人の有効な意思確認が難しいと、契約実務に支障が出ます。
- 解体や大規模修繕も判断が必要になる:空き家対策として必要でも、すぐに進められないことがあります。
- 固定資産税や管理負担だけが残る:使わない実家でも、維持コストは止まりません。
法務局の案内でも、相続人の中に認知症などで判断能力が低下した人がいると、遺産分割や相続した不動産の売却が進みにくくなることが示されています。
2.家族信託・任意後見・生前贈与の違い
実家の空き家対策としてよく出てくるのが、この3つです。ただし、似ているようで目的はかなり違います。
家族信託
法務局の相続ノートでは、家族信託は、自分の財産を信頼できる家族等に託し、定めた目的に従って管理・処分・承継する仕組みと説明されています。
そのため、将来の売却や管理を見据えて、不動産の管理・処分権限を先に設計しておきたい場面では有力です。
任意後見
任意後見は、本人が元気なうちに契約しておき、判断能力が低下した後に、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで効力が生じる制度です。
生活面や財産管理全般を含めて備えられるのが強みです。なお、裁判所の案内では、任意後見人による本人の居住用不動産の処分について、家庭裁判所の許可は不要とされています。もっとも、任意後見監督人への相談や監督の下で進めることになります。
生前贈与
生前贈与は、名義そのものを先に移してしまう方法です。処分の主体が子に変わるため、構造としては分かりやすいです。
ただし、税負担が重くなりやすい点に注意が必要です。国税庁は、贈与により土地や建物を取得した場合には不動産取得税がかかると案内しています。贈与税の問題も別途生じ得ます。
3.空き家対策として、どれを軸に考えるべきか?
結論から言うと、「実家を将来どうしたいか」で変わります。
将来、実家を売却・整理する可能性が高いなら
この場合は、家族信託を中心に検討する価値があります。家族信託は、あらかじめ管理・処分の枠組みを設計する発想と相性が良く、空き家化や売却凍結を防ぐ目的に向いています。これは、法務局が示す「管理・処分・承継」の仕組みから見ても自然な方向です。
生活支援や財産管理全般も含めて備えたいなら
任意後見は有力です。介護や施設入所、生活面の契約、財産管理全般も視野に入れやすいからです。売却だけを目的に単純比較するのではなく、家族全体の支援体制まで考えるなら外せません。
名義を先に完全に移したいなら
生前贈与という選択肢はあります。ただし、税負担が現実に重くなりやすいため、安易には勧めにくいです。税理士を交えた検討が必要です。
4.何もしないことが最大のリスクです
どの制度を使うにしても、前提は親に十分な判断能力があるうちに準備することです。
判断能力が落ちた後は、任意後見契約をその時点で新たに結ぶことはできませんし、家族信託や生前贈与も同様に、本人の意思能力が前提になります。そうなると、最終的には法定後見の検討に進むことになります。裁判所も、後見・保佐・補助を、判断能力の低下後に本人を保護する手続として案内しています。
つまり、空き家問題を防ぐうえで一番危ないのは、制度選びで迷うことそのものより、何も決めずに先送りすることです。
5.よくあるご質問
Q.親が少し物忘れしていても、まだ準備できますか?
A.ケースによります。
重要なのは、契約時点で本人に必要な判断能力があるかです。心配がある場合は、早めに相談した方がよいです。
Q.実家を将来売る可能性があるなら、まず何を考えるべきですか?
A.「誰が管理し、必要なら売却判断をするのか」を先に整理すべきです。
この視点では、家族信託が有力なことが多いですが、生活支援全体まで見るなら任意後見も重要です。
Q.任意後見があれば何でも自由にできますか?
A.そうではありません。
任意後見監督人の監督の下で進めることになりますし、本人保護の観点から慎重な判断が必要です。ただ、裁判所の案内では、任意後見人による居住用不動産処分について家庭裁判所の許可は不要とされています。
Q.生前贈与なら一番確実ですか?
A.構造は分かりやすいですが、税負担が重くなりやすいです。
贈与税だけでなく、不動産取得税も問題になります。税務面を無視して進めるのは危険です。
まとめ|まずは「将来、実家をどうしたいか」を家族で決める
大切なのは、制度名から入ることではありません。まず、将来、実家を売るのか、貸すのか、残すのかを家族で整理することが先です。
その上で、売却や管理処分の柔軟性を重視するなら家族信託、生活支援や財産管理全般も含めるなら任意後見、名義を先に移すなら生前贈与という形で、制度を比較していくのが現実的です。
当事務所では、実家の空き家化や不動産凍結を防ぐ観点から、ご家族の状況に応じた整理の方向性を一緒に検討しています。
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